魔法使いの弟子日記 師匠との対話覚書
一度汚れたらもう無理なのだろうか
私達夫婦は揃って大変な不祥事を起こしたらしい。
何やら怖い人外の人たちに囲まれている様子。暗闇の中なのでその形はわからないままだ。
私達は両手を拘束され地に頬を付けられた。ダンナが横で何かに顔を踏まれて血を流す。
暗闇の中から声がダンナに質問をした。
「どうしても許してほしいと願うなら、お前の大事なものを一つ差し出せ。
お前にとって、一番大事なものとは何だ?」
ダンナは「命です。自分の命です!」と答えた。暗闇からの声はさらにダンナに尋ねる。
「なら、そばにいる女の命は要らないな?」奴は二つ返事でyesといった。
ダンナは涙と鼻水が混ざったぐちゃぐちゃな顔で私に謝った。
「すまない、本当にすまなかったごめんなさい。
でも死にたくない。怖い。痛いのも嫌だ。助かりたい。」
仕方のないことだと思った。私も一番自分がかわいい。
私は自分で生き伸びる。どんなふうになっても怨むことはしない。
同じこと聞かれたら同じように答えたかもしれないから。
先に問われたほうが正直に答えただけの話だろ。大丈夫だ。あなたを支持するよ。
「そうか。なら一番大事なものを差し出せ。お前自体の命がすべて全く、
なかったことにしてやるぜ。お前の存在のすべてをな。」
ダンナの姿が消しゴムで消されたように消えてしまった。
闇の中から笑い声がする。
「命の一つくらいとったってつまんねーな。
平凡だが普遍的な答えだ。誰もがそう言うだろうよ。当たり前じゃん。
お前のダンナつくづくシンプルアホウだな。」
人間の命を勝手になかったことにしておいて笑っているのだ。
命はひとりでつくられたものではない。
そうやって一つの命を消したということは、
それにつながるすべての人たちの努力を無にしたということ。
舅さん夫婦の苦労も、舅さん夫婦を育て上げたその前の人たちも、
それにかかわったすべての人たちすべての、色々なことを気持ちも。
すべてなかったことにしたということ。
その行為のおぞましさや、非情さに歯が震えた。
「お前。」暗闇から声がかかった。今度は私に質問をしたらしい。
「もう命はひとつもらったからな。今度は別のものが欲しい。
お前にとって一番大事なものは何だ。少し面白い回答をしろよ。
言えないんなら俺らが指定したものをもらう。」
つまらんクイズだ。命以外に大事なものなんてなんかあったか?
夢とか希望、誇りとか尊厳とか、
そういう崇高で抽象的な難しいことを言えばいいのか。
親とか兄弟とか、自分以外の命のありがたさについて言えばいいのか。
私は答えることはできなかった。
暗闇からまた笑い声がする。
「そんなことだろーと思ったぜ。お前きっと欲張りだから迷って何にも決めないで、
頭の中で屁理屈ごねてんだろ?見え透いているんだよ。
時間かかるくらいならこっちが指定した事をやれや。」
目の前にはポータブルトイレのバケツの中に多量の汚水が溜まっている。
そして泥水がコップに1杯。
「そのバケツの水をかぶって、泥水1杯飲めよ。そしたら解放してやる。」
かなり躊躇した。しかし助かりたくて私はバケツの水をかぶって泥水を飲んだ。
泥水を飲みほした瞬間。私の周囲の暗闇は普段の風景に戻った。
私は風呂に入りたくて家の中に入ろうとするが、「汚いものがはいるんじゃない」
舅さん夫婦やダンナに塩をぶつけられ入れてもらえない。
洗えば落ちるんだ。なんでそんなに嫌うんだ。
「いくら助かるためとは言っても、そんなに汚いものをかぶるなんてありえない。
100年の恋もこれで覚める。泥水を啜ったクチに二度とキスはしたくない」
ダンナはそういった。
犬に近づいていってみた。汚い臭い私は犬にも認識されず吠えたてられ続ける。
川に行き身体を洗おうとすれば、川下に汚いものが流れるのをよしとしない人たちが、
ココロない罵声を浴びせ石を投げつける。猟銃で威嚇射撃も始まった。
私は汚れたまま町を歩く。皆が避けて通り石を投げつけ、言葉で刺し貫く。
行く先々で蔑まれ存在自体を否定され続ける。
洗えば落ちるんだ。なんでこんな扱いを受けるんだ。
洗わせてくれ、体に染みつきそうなこの汚れを洗わせてくれたら、
元の私に戻れるだろうに。
その時、目の前が再び暗闇に覆われる。
「一度汚れたものは二度と奇麗なものには戻れない。
たとえ洗い流したとしても、汚れた事実は消えない。
便所洗った歯ブラシを消毒したってそれを自分の歯ブラシにしようは思わないだろ?
そういうことだ。汚れるというのはそういうことだ。お前は二度と、清潔には戻れない。
泥水までくらって身体の中まで汚れきったお前を、使ってくれる所などない。」
わかるだろ?
暗闇からの声はげらげら笑いながら言った。
「とりあえず、お前の大事にしている自分ってやつをもらった。
こんなに面白いとは思わなかった。命もらうより面白いぜ。じゃあな。
一生汚物まみれで暮らせ。汚いお前」
夢から覚めた時には寒々とした気持ちに包まれていた。
私が奪われたのは命ではなくて「今まで形作っていた自分自身」だったようだ。
汚れたままで洗い落とせず徘徊していく時間が長いほど、
洗い落とすのが困難になる泥水や異臭のような、生活の悪習慣。
それを喰らわなければ生きていけない弱々しい存在の自分。
戻りたいと願っても叶わず、新しい場所も見つからない。
汚れていなかった頃の自分を基準にして考えてしまいがちで、今を受け入れられない。
奇麗になったとしても、二度と元のように扱われないことは知っている。
しかしどうにかして洗い落としたいと願い、洗う場所を求めてさまよっている。
一度汚れたらもう無理なのだろうか。誰ももう私を受け入れてはくれないのだろうか。
小説サイトに作品を書き始めていますが
自分の説明能力の向上につながるのではと思い文章を書き始めた。
このブログを作ろうとしたきっかけの一つだった。
文章を書いているうちに色々と面白い人脈ができて、
小説を書いてみようという暴挙にでた。小説にするのはとても難しい。
でも継続をしてみようと思う。今まで何でも途中であきらめた自分を
そろそろ辞めたいのだ。作品の良しあしも大事だが、その前に、とにかく続けるという、
最低限のところからのスタートだ。多くを求める器用さはない。
他人の書いた小説とかは好きであちこちのサイトで読んでいたけれど。
みんなやはり修業してるのですなぁ。
新しい挑戦をしてみました
新しい試みの一つとして、「小説家になろう」の会員登録をしてみました。
色々書き始めていると面白くなってきて、
もっといいものを書くためにどうしたらいいのだろうと考えていたら、
このサイトを見つけました。優良な作家さん達がたくさんいて
読むだけで充分楽しいところです。
このブログに掲載している文章を若干修正して掲載をすることにしました。
とりあえずの名前「さかい まひろ」 で出しました。
ええもちろん姓名判断してみましたよ。中吉名前でしたがまぁいいでしょう。
「小説家になろう」サーバーに直接リンクをします。私の作品はこちらです。
みんな、私についてくるのかい?
私のような恥の多い人間は、人前で反省することすらできず、
毎晩のように一人で脳内反省会を繰り返している。
翌日に生かすことすらできていないので、反省は延々ループをしてしまう。
すっきりした夢を見ることはあまりない。
今の私の現実の状態がすでにすっきりではないからだ。
では、すっきりした、ってのはどういう状態なのだろう。
それもよくわからない。すっきりしたことないからな。
そんなもやもや続きの自分がよくわかるようなある日の夢の話。
過日の夜のお戯れ。
鍵言葉は「山頂」「ヘタレとあつくるしいぞう」「団長決定ってなんで?」ダメだこりゃ。
私は知らない人たちとともにパーティーを組んで、吹雪のひどい山頂に挑んでいる。
顔には容赦なく氷が殴りかかってくるようなひりひりとした痛さがあり、
疲れはピークに達している。あともう少し、もう少しで山頂なのだ。
しかし自然の猛威が山頂に達することを許さない。
テントで一旦休憩をとり吹雪が落ち着くのを待つことにする。
パーティーにいたのは私を含め4人。メンバーの一人は休憩に異議を唱えた。
「もう少し、もう少しで山頂に着くんですよ?
ココで待ってたって吹雪止まないかもしれないじゃないっすか。
多少の無理をしてでも、ココは全員で力を合わせて登っていくべきです!!
ねぇ、そうでしょう?そうでしょう!!」
赤いウェアーの暑苦しい奴はメンバーひとりずつの肩を叩いて、
激しい口調で訴えた。
だが、少し年配の青のウェアーの男性は力なく首を振る。
「お前ねぇ。あと少しだから大事なのだよ。
山頂までの道は細く険しい。足を置くスペースを確保するのもままならない。
普通の状態でも厳しい道だ。それを、この悪天候で視界確保もできないで、
疲労困憊の私達が登って行くのは自殺行為だ。下山してもいいくらいだ。
いいか、こんなときだから、大事に確実にしなければならないよ。
全員で生きて帰ろうじゃないか。もう少し待ちなさい」
青の男に赤を諭すような口調で言う。
吐く息は白く凍った。男の目は血走っており声も細くチカラを感じられない。
赤の男の顎が上がった。上から見下ろすような視線を向けて青に言う。
「そうやって、多少の困難に負けちゃうからいつまでたっても登れないんだ。
ココまで私達は来れました。並大抵の苦労じゃなかったですよ、そりゃ。
でももう見えるところまで来ているんです。何をそんなに、躊躇しているんです?
大体吹雪止むかどうかだって、自然任せでわからんもんでしょうが?
いつまで待っていたって、疲労度が増すだけでしょう?凍えて動けなくなる。
多少のリスクは覚悟でココにきたんじゃないですか。いまさら何が怖いんですか。
命を失うことですか?そんなこと、ココに来る前に覚悟したでしょう?」
赤はつばが飛ぶくらい暑苦しく語る。私の隣で語っているのだが、
何だか非常に億劫に感じて目をそらしてしまう。
青のオヤジも反撃するほどの体力も残っていないらしく、
「とにかく待つんだ。命は大事だ」それだけ言って目を伏せた。
赤は私達をにらんだ。
「こんな意気地無しとは思いませんでした。
僕は行きますよ。一人でも行きます。絶対に目標を達成して見せる。
あなた達のような臆病ものにはならない。僕はココから落ちても後悔はない!!」
テントから出ていこうとする赤の手を引っ張ってとめたのは、
オレンジウェアの男。
オレンジ男の右手は赤男の華奢な腕を力強く握り、
左手は、私と青男の手を握っていた。私達はオレンジの男で繋がれている。
私達4人は初めて目を合わせた。オレンジ男は言った。
「何やってんだお前ら。ゴール目の前で仲間割れか。
山頂に着いて生きて帰ってこそ登山っていうんだぜ。
帰れないときは遭難っていうし、行かないで帰宅するのはハイキングと一緒だ。」
オレンジ男は私達の顔を交互に見詰めた。
赤は気まずそうに下を向き、青の男は少しギラリとした瞳で顔をあげた。
「雪崩の危険もある。いつまでもココにはいられない。
それはわかる。でもこんな状態で山頂に登れる実力が俺らにあるかって話だ。
無駄に命を捨てて家族に一生の迷惑をかけることになるのもなぁ。
そこで、決断ってことよ。どうするよ団長?」
オレンジ男はなぜかそこで私の顔を見た。
え?このパーティーの団長は私なのか?私なのか!!
「あと何分くらい、俺らはココで休むかね。で、どのタイミングで出る?
引き返すにしろ決行するにしろ、タイミングとか大事だと思わんね。
俺らはあんたの決断に従う。今までだってそうしてきたんだ。
そうやってココまで来れた。そのことには感謝している。意義はあるか?」
オレンジ男は青と赤の二人を見た。
二人は首を振って私の目をまっすぐ見つめてきやがる。
オレンジ男もにやりと笑いうなずいた。
「一番面倒なのはココで本懐を遂げないまま後悔しながら死ぬことだよ。
何カ月も家族に生死の心配かけた挙句、死体を捜索してもらうなんてさ。たまんねぇや。
どっちにしても、あんたの役に立ったと思って死にたい。
俺らにとっての団長ってのはそのくらいの人だ。でなきゃ、ココまでついてくるもんか。」
私はドキリとした。よくわからないけど団長になっていた。
まぁそんなことはさておいて、これだけ私を愛してくれている
この人たちの期待にこたえたい。しかしいったいどうすれば??
「さ、団長。決断してくれ。俺たちはどちらにどのタイミングで行けばいい?」
3人の慈愛のまなざしは私だけを見て、私の言葉を待っている。
夢はそこで途切れる。私は決断をすることができなかった。
あのパーティーはどうなってしまうんだろう。私は何と声をかけるべきだったのか。
師匠の話 「魔法 言葉縛りの術」
私以外の人にとっては、何のことやらイメージの少ない言葉の羅列。
しかし私にとっては師匠の言葉を思い出すには十分な鍵言葉。
PSPでゲームをしていた。最近はサイトも開かず新しいゲームも買えないんで、
本当に困ったもんだと思いながらやっていた。
ゲームはアークザラット3。
ギルドで無言でぼちぼちと仕事をこなしながら、大きな筋を追っていくタイプのRPG。
大名作、というわけでもないが駄作ではない、本当に王道的なゲーム。
私の年代ならやったことある人は多いんじゃないだろうか。
そのゲームでどうしても難しいクエストがあって。
何度もやって失敗し続けていたので、夢の中でまでクエストクリアーの方法考えてた。
しかし難しそう。もう一時やめてしまえと思ってゲーム機を放り投げた。
「こらーそのゲーム機いくらすると思ってんねん。投げて壊れたらどないするんやー。
お前買うカネもないくせに、この壊し専門家が」
師匠は私の横で怒鳴ってゲーム機を取り上げた。
あんたできるんならクエストやっといてくれや。なんかできねーから飽きた。
私は師匠にゲームを頼んだ。
それから、「台所でなにかひとくちつまもう」と、
蜂蜜熊のような事を考えながら席をはずそうとした。すると、師匠が呼びとめる。
「おい、ちょっと待てやお前。今日は魔法の一つを教えたろと思って来たんやで。」
そんな大事なことなら早く言え。早く教えろ起きたらすぐ使う。
で、何ができるん?ガス使わなくても煮炊きできる魔法?洗濯物畳みが一瞬で終わる魔法?
出勤時間が10分くらい早くなる魔法?朝の5分が20分くらいになる魔法??
「お ま え は あほかーーー。こんな都合よい魔法あるか。
あるならもうとっくの昔に教えとる。というか。生活感出し過ぎや。
お前、家事魔法しか興味ないんか。そんなに家事面倒なら、
高級家電買う方法考えたらどないやねん。」
それもほら、師匠が教えてくれないと・・・。
「ほんまお前アホのデブス主婦やろ呆れて笑いが出るわ。
せやけどまぁ、もう朝が来るから早めに教えといたる。起きたらすぐに使える。」
ふんふん そしてその方法は?
「言葉縛りの術、や。」 言葉縛り。難しい感じやね。で、ネーミングにセンスがない。
「ネーミングセンスは君の頭の中でのできごとやから、君の責任やしゃあないで。
方法は簡単。困難を認めたうえで、その困難に勝つ自分をイメージする言霊を重ねる。」
よくわかりません。
「たとえばね。このゲームのクエストでけへんやん?難しいやろ。
その時にちゃんと言葉に出して、やるなぁこのゲーム作った人クエスト難しなぁー。っていう。
でもそのあとの言葉が肝心。難しいからもうあかんわー、じゃなくて。
難しいけどやったるでー、俺はできる子ぉやもん。的なことを言う。言葉に出して、やで?」
それは私がなんか以前聞いたことがあるような話だ。
なぜそれを今、潜在意識の中の師匠が魔法として引っ張ってきたんだろう。
「それはなぁ、今の自分がな、自分を言葉で縛っているような気がしていて、
潜在意識の中の俺が窮屈に思っているからやと思うで。
仕事部署変わって、やり方全部変わってもうた、夜勤ないから給料下がった。
色々あって人間関係も微妙。もうあかん、って。
クチに出しただけで終わったやろ?その時に窮屈さを感じたんよ。
あぁ言霊で可能性縛ってしもうてるね、って。」
師匠はゲーム画面を見つめながら喋っている。
「難しいもうあかん死んでしまえその他色々。そういう言葉をまず最初に出して、
自分の中のイライラしたものとかを一切合切認めていけや。
自分がドロドロとした愚痴だらけの生き物だということを認めろ。
君がいい人間であるわけあれへん。美しい人間にはほど遠い。器は限りなく小さい。
でもな、愚痴を言ったりなにしたりしたところで、役割が消えるわけやない。
問題が消えるわけでもない。期限が延びただけで、その時は必ずやってくる。」
ゲームは続いている。クエストまた失敗しやがった。しかも凡ミス。
もういいからゲーム返して。そして二度とやらんでよろしい。
しかし師匠は私にゲームを返してくれない。
「やってくるけど、そんなものには勝つんや、って。少ない負けん気を出してやれや。
そういう負けん気が起こらないときも、とりあえず愚痴を吐き出した後で、
負けん気を感じる言葉を付け加えていけ。言葉で自分を縛ることで、
本当に負けないような気持ちを作る土台ができる。逆もしかり。」
師匠はよし、といってゲーム機を私に返した。クエストはできていない。
やっぱりなお前。師匠はへらへら笑っている。
「愚痴を言う人に今自分こまっとるんやろ?
愚痴にとりあえずは嫌な顔せんと、あんたは大変やねんねーって、
気持ちだけ受け取ってあげたらどない?
で、最後はでもあなたのここが好きだしよくできていると私は思っている、
って最後を締めたら、その人をいい言葉で助けられるんちゃうん。
というわけで、覚えていたら早速明日から実行してみたらどう?」
翌日から。少しずつ使ってはみているが、タイミングが難しい。
そしてついつい、愚痴のみで終わってしまう。
まだまだ難しい。私自身が実行にできていないので効果について報告するのも困難。
困難だから魔法、なのだろうか。でも実行できた時は少しいいことあるといいのだがな。
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嫁と犬だけの家
ダンナは夜勤、舅さん夫婦はダンナ弟宅にお泊りの日だ。
自分ひとりで家を建てる財力もない主婦が図々しいのだけれど、
ひとり時間が欲しいとずっと思い続けているのでこういう日は嬉しい。
私のひとり時間は職場までの往復間の車内だけ。
車の中で水筒のお茶と、とちょっとしたお菓子を買って食べるのが一番楽しくてほっとする。
大型ショッピングセンターの屋上の駐車場の、空いた所に車をとめて泣いていることもある。
車の中でなければひとりになれないからだ。
今いる家は、残念ながら自分の家ではあるがココロは安らぐことはない。
家にいる時間が少ないから、家にいる覚悟や愛着が足りないのだ。
そう思い込んだら少し楽になるだろうか。
とりあえずまぁ、日ごろの生活をさせていただいている感謝の表現として、
これから色々な場所を掃除してみようか。
この家は舅さん夫婦が築きあげた家族の、思い出や苦労の詰まっている家だ。
私が掃除とか整理整頓するのはとても気に入らないらしく、
色々やっても全部やりなおされるから、一緒なんだけれどね。
私は子供を産んでいないので、この家では舅さん夫婦の家族の付属品扱い。
勝手は許されていない。許すとクチでは言う。民主主義の国になったから。
しかしあの人たちの行動は違う。
この家のコタツもリビングテーブルも小さい正方形だからね。
テレビがみんな見えるように坐るとしたら、3人しか座れないようになってんだ。
私が必然的に一人あまりになる。そういうときは台所で皿を洗えということだ。
テーブルを拭け洗面所を磨け働け主婦なんだろ、ってことだ。
私が席につけないのを誰も気にしない。自己主張をするとうるさがられる。
面倒になって黙る。団欒の見えない場所に行くと「身勝手」といわれる。
本当に同居生活って苦しいよ。私にとっては。でも修業だからね。
経済力つけたら白黒つけるぜ。なんでいつまでも我慢を続けなきゃいけないんだ。
私の人生だ。私が最後は責任取らなきゃいけないんだから、
好きにさせてもらうぜ。
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隣で眠る嫁はこのようなことをかんがえている
正直に言おう。
私のダンナはマダオ(まるで だめな おっさん)だ。
田舎の年寄りが考えている長男ドリームに付き合わされた影響で、
自分と両親が築いた家庭に嫁を家畜扱いにして無理に押し込む。
同居生活を強いて、嫁が精神の限界を訴えても我慢をさせて暮らす。
パチンコにお金をつぎ込んだ事を責められたら逆切れをする。
風呂でボディーソープが切れているのに自分で入れ替えもしない。
落花生の殻をむいてもゴミ箱に入れない。
豚鼻のような形にジーンズを脱ぎ捨て歩く。
犬の目の前で煙草を吸い晩酌をふたくち飲ませる。
離婚できない自分の臆病さに自己嫌悪している嫁の気持ちを
知っているのに知らんふりをして、
隣で高いびきをかく。マダオいつかその寝首かかれるぜ絶対。
嫁は寝る前に度々、遠方の自分の両親に対して懺悔する。
お父さんお母さんごめんなさい。
私はダンナをこんなマダオにしてしまいました。
いえ、もとからマダオだったのに、私は気が付いていなかったのかもしれません。
幸せになれよと育て嫁がせてくれたのに、本当は毎日後悔ばかりしています。
別れないのは帰る場所を作るお金がないからだということと、
一人で生きていく覚悟と自信がない臆病人間だからです。
臆病人間が適当なところでいい顔をしたから、こんな夫婦になってしまいました。
情だけで愛のないような結婚にしがみついています。
私は30代から40代の、人生で一番充実した時間帯を、
この人とこの家とともに過ごしています。
しかし自分の人生を考えると先が見えたような気がする日があります。
情の中から愛が育つのでしょうか。苛立つ日々が続きます。
舅さん夫婦が作った家庭に間借りしたような嫁は、
子供を産んで自分の家庭を作ることもできず、
舅さん夫婦を看とり、10歳年上のダンナを看とり、
ひとりさびしく認知症の専門病院でわずかに生活保護を受けながら
見舞う人もなくさびしく無縁仏になるか、お墓の中までダンナ一族の中で間借りをして
肩身の狭い思いを永久にしながら暮らすのかもしれません。
お父さんお母さん。本当にすみません。こんな娘にするつもりはなかったのでしょう。
今はココにしがみついています。
しかし臆病な人間のままで終わらないようにします。
犬を最後まで看とる間に、経済的な基盤を作ります。
そのあとで意思を伝えようと思います。
私の理想は、依存少ない独立した家庭を作ること。
ひとりかふたりの新しい家族と泣き笑いして暮らしたい。
それが無理ならふたりで、役割分担を対等に担える家をつくりたい。
今のマダオなダンナは好きだけれども、
ダンナが舅さん夫婦の「息子」以外の役割を兼務する気がないなら、
家庭を作らずひとりでいたほうがましな気がすること。
私だけがよい人間であるわけがありません。
ダンナも、舅さん夫婦も私が来たことでたくさんのことを我慢しているはずです。
幸せになるための我慢なのか、ただの臆病ものの我慢になってしまうのか。
今後の数年がんばることで、お互いの幸せのための辛抱期間だったと感じたいです。
社会的なチカラのないタダの特技なしの主婦でしかないです。
今はチカラを蓄えるだけですが、幸せをつかみます。
ココロを折らずに貫きます。身体を大事に働きます。お金を貯めます。
ダンナの人間を見極めます。自分の人間を育てます。
いい友人と出会えるように笑顔を忘れないようにします。
だからどうか。
お父さんとお母さんはできる範囲で身体を元気に保って、
楽しいことをしてください。
ふたりがわたしを育てたことを後悔しないように、私もベストを尽くします。
ココまで思うと大体、泣いてしまって翌日は目が腫れている。
しかし考えずにはいられない。
結婚するとき、こんなことを考えるようになるなんて、
本当に思いもしなかった。でも結婚って、そういう側面あるんだろうね。
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贅肉販売業
ある日の夢のキーワード
「贅肉販売業」「グラムの価値は」「私は家畜にはならない」
家で台所の拭き掃除をしながらテレビを観ていたら、
いきなり白衣を着た人たちが数人上がり込んできた。舅さん夫婦は笑顔で迎えた。
私を指さして「これなんですよ」というのだ。
これってなんだお前らとうとう嫁をモノ扱いか。人間捨てたな。
舅さん夫婦に「これってなんですか?この人たちはどんなお客様ですか」と
大声で尋ねた。特に舅さんのほうが耳が遠くて若干大声を出さないと無理なのね。
舅さんは大声で私の質問に答えた。
「お前にとっても俺らにとってもいいお客さんだ。お茶を出しなさい」
白衣を着た人の一人が異常なまでの愛想良さで答えた。
「いいえご主人お構いなく。私どもは仕事で来ておりますから。
さて早速でございますが、必要事項にご記入をお願いします。」
舅さんに老眼鏡と書類を渡した。
舅さんはコタツに坐り、姑さんと何やら相談しながら書類を書いている。
舅さんが書類を持って行ったのを見ながら、別の白衣の男が
馴れ馴れしく声をかけてきた。
「さて。奥様も。早速ですがこちらの質問にお答え願います。
あぁ、申し遅れました。私どもは贅肉仲介販売業を営んでおります・・・。」
そういいながら名刺を出してきた。
ぜ、贅肉仲介販売業ってどういうことでしょうか?
「あなたがお腹にためているその脂。
グラムいくらでこちらが買い取りをさせていただくことができるんですよ。
私共が買い取った脂は必要な方々に提供させていただくことになりますし、
奥様はご希望通りに痩身ができるという、まさに全世界が待ち望む業種でございます」
素晴らしい。しかもお金になるんでしょうが?販売っていうからには。
「ええ。奥様のほうにも若干の手数料が間接的に入るかもしれませんが、
まぁブリーダー登録されている方のほうに代金はお支払いしておりますので・・・」
ブリーダー登録?
「ご主人様のほうに・・・。」
なんですと。ご主人様ってさっきから言っているのは舅さんのことだろ?
舅さんが私を太らせて、その贅肉を売って私腹を肥やしていると。
私は嫁ではなくて家畜として飼われているような言い方じゃないか。
冗談じゃねぇよ。誰が脂とらせてやるもんか。
人間タダで太れるわけじゃねぇんだぞ。
この脂肪一つずつが実は無駄食いのカネかかってんだ。
手数料ならこっちに直接支払いやがれぶひーーーーーー。
私は暴れに暴れて白衣の男らをなぎ倒し、
舅さんにくってかかり、ちゃぶ台返しをし。とにかく大暴れをした。
そんな夢だった。
自分が怠けて太っておいて、それを売ってカネに変えようなんて、
ずいぶん横着な考え方をしているものだ。
デブなんて、太るにもカネはかかるし、健康崩して医療費かかるし、
酸素消費し過ぎてエコにならんし。いいこと一つもないのにね。
自分の怠け癖には本当に嫌になるよ。
ウォーキングは始めてるんだけれど成果が上がらなくて焦っているのかもね。
もう少し色々なモノに優しい身体になりたいわ。
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お土産忘れたらいかんやろが
病院に勤めている。年輩の方が多い病棟。
以前の病棟は認知症専門病棟だった。今度の病棟は少し違う。
入院中のトシエさん(仮名:初孫嬉しい60歳)がお風呂介助をするとき、
私に面白い夢の話をしてくれた。面白いから話しますよトシエさん。
トシエさんは夢の中でとうとう天国に召される順番がきていたらしい。
三途の川のほとりで、船が来るのを待っていたそうな。
対岸には先に旅立ったダンナ様が、いつものように腕を組んで偉そうな顔で、
トシエさんをじっと見つめていたらしい。
嬉しい半面、トシエさんは「あぁまたあの人とおらないかんかよ」と
少しため息をついたらしい。
すると、ダンナ様が何かトシエさんに向かって大声で叫んでいる。
両手で箱の形を作りながら何か言っている。
すると、ダンナ様は「 お み や げ 」「ま ん じゅ う 」と
言っている様子だったそうな。
「あんたよ、葬式まんじゅうは生きとるもんだけが食べるもんじゃわい」
トシエさんが大声でダンナ様に言い返した。
だがそれを聞くとダンナ様がものすごく怖い顔して、大声で叫んだそうな。
「おまえ タダで 天国 来れると おもっとったんかー
お土産忘れたらいかーーーん
とりにかえってこーーーーーい」
久しぶりにあったのに、何という言い草だろう。
やっぱりうちのダンナはダメな人じゃわ。わかったわい。取りに帰るわ。
そういって後ろを振り返ったら朝が来ていた、というお話だった。
トシエさんはその話を大笑いしながら話してくれた。
「やっぱりうちの亭主はダメなオトコよ。普通そんな風に
三途の川で追い返したりしないでしょう?本当にがっかりした。」
その話を聞いたみんなも大笑いしていた。
そして職員のミナさん(仮名:ラッキョウ大嫌い36歳)が言う。
「ダンナさんはわざと言ったっちゃが。
天国にそんなに急いで来なくていいわい、って言っているのよ。
もう少しゆっくりしたらいいわ。そしたらおまんじゅう送る方法、
見つかるんじゃないかしら?」
「もういいわよ。私も精いっぱい生きたわ。そろそろ楽がしたいわぁ」
トシエさんはシャンプーの泡で耳の後ろを洗いながら言った。
確かに。トシエさん。
天国にはもう少しゆっくりいってほしいですわ。
いずれ行くところでしょうし、よほどいいところらしくて、
まだ誰も行って帰ってきた人がいないくらいのいいところなんでしょうよ。
楽しみは後にとっておいて。
病気で身体がきついかもしれない。傷みは自分自身しかわからないからね。、
私達が代理では受けられないし。天国行ったら終わるんだろうなって。
そう思う気持ちは想像できるよ。でもね。
あなたがいないととても淋しいわ。
だからぼちぼちゆっくりしてから、天国に行ってくださいね。
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魔法のポトフ
「ポトフはごたごた煮」「いつの間にか願望になる」「調子に乗るな」
私は台所で夕飯の支度をしている。いつものことだ。主婦だからな。
仕事から帰ってきたら大急ぎで調理する。
下ごしらえは出勤前にあらかた済ませている。少しは楽だが、
朝と夕方とでは食べたいものが変わっている、なんてことはよくある。
その時も、朝はカレーライスのつもりでそろえた材料なのに、
夕方帰ってきたら「やっぱりポトフにしちゃおう。」と思ったので変更をしていた。
大きな圧力なべにぼとぼとと材料とブイヨン類を投入している。
時間がない時の煮込み料理は圧力なべでショートカットしてしまう。
冷蔵庫にある半端な野菜はどんどん入れてしまう。
ポトフを煮ながら炊飯器を準備。舅さん夫婦用の干物を焼くためにグリル点火。
本当にリアルな家事。夢の中まで家事している主婦のカガミ。
ほどなく料理が出来上がり家族に盛り付けて食べさせる。
するとダンナが言うのだ。
「ごちゃごちゃしてても、一つずつの味がわかるね。」「うん」
ダンナはポトフの中からジャガイモを取り出す。「これは芋」
次にウインナーとそれに絡まるキャベツを取り出し「ウインナーキャベツ」という。
そうやって説明せずに逐一全部食べやがれ行儀が悪い。
怒鳴ろうと思った。しかし彼の視線は私ではなく、私の横を見ている。
横にはいつの間にかいぬたろうが坐っていて、
わふわふとした顔をして、うらやましそうにご飯を見ている。
こら。犬は絶対家の中に入れないのがうちの決まりじゃないか。
いぬたろう 自分のハウスにゴーホームよ。
ダンナといぬたろうは私を無視してふたりみつめあう。
ダンナはいぬたろうにポトフの中身を説明し続ける。
「これ人参。畑で小さくなって抜いてきたやつ。絡まってるのは葉っぱ。」
「新玉ねぎの間引きした奴。ラッキョウと玉ねぎの中間の大きさだぜ」
説明の後、いぬたろうにむかって説明された中身を一つずつ投げて渡す。
いぬたろうは上手におクチでキャッチして食べていく。
それから。
説明はどんどん怪しい方向へ進む。私が入れた覚えがないものまで、
ポトフからドンドン出てくるのだ。 そして犬はそれを際限なく食べ続ける。
「これアンパン。お前の大好物な」 わふ
「桜餅は葉っぱくせぇけど餡がいいよな。俺も大好き」 わふぅん!
「こんなステーキ肉が食べたいよなぁ一枚500円以上するくらいのな」わおあお
「俺今までこんな伊勢海老食べたことないんだぜー」 わお
ダンナは自分の望みの物をひたすらポトフから出してきて
犬に食べさせる。これの繰り返しだった。
お前らいい加減にしろ!一喝したところで目が覚めた。
なんでこんな夢みちゃうんだろうな。
本当はもっと色々なことをふたりにしてあげたい。
ところがどうにもならない現実に、かなり苛立っているのは事実。
だって節約しないと給料厳しいんだもの。
4月から部署を異動した。部署移動した先が夜勤がないため、夜勤手当もなし。
給料は手取りマイナス6千円から8千円になってしまったのだ。
生活費のことで頭がいっぱいになりながら眠るとそうなってしまうんだろうね。
あぁ。
お金というのは、給料でさっと明細に入ってきたのにもかかわらず、
瞬間タッチアンドゴーで飛び出していく。なぜなんでしょうな。
そんなに私の財布は居心地が悪いのだろうか。
しかし、一度おカネにクチが遭ったら聞いてみたいよ。
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